唯物論研究協会の意見表明

以下の声明を各政党、主要マスコミに送付しました。

特定秘密保護法案は正当性がなく、廃案を求める

2013年11月22日 唯物論研究協会(全国唯研)委員会

 安倍自民党内閣が国会に提出している「特定秘密保護法案」(以下、「法案」)は、あらゆる意味で正当性がなく、私たち唯物論研究協会は、廃案を要求する。
 すでに日弁連などが明らかにしているとおり、法案は、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(「ツワネ原則」)などに照らしても多くの重大な欠陥を有し、また正当性のないものである。
 第1に、安全保障上の4つの事項(防衛、外交、特定有害活動、テロリズム)について「特定秘密」を「行政機関の長」が指定するかぎりにおいて、秘密は無制限に拡張される可能性があり、それゆえに憲法に保障される「国民の知る権利」のみならず、国権の最高機関たる国会の権限をも深甚に侵害する。
 第2に、法案は安全保障の名の下に、さまざまな適性評価の調査、罰則などを定めており、「知る権利」だけでなく、反対に思想・信教の自由、言論等の表現の自由、学問の自由、その他の国民の自由、プライバシーなどをも全般的に抑圧し、かえって趣旨とは異なり、「国民の安全」を脅かすものとなっている。
 第3に、とくに学問研究に関して言えば、権力から独立した自由に則ってこそ成り立つ批判的研究を根本的に侵害する虞れがある。このことは私たちの学会だけでなく、すべての学術研究団体の存立に関わる重大事と言わなければならない。
 戦前、1932年に戸坂潤や岡邦雄らが創立した唯物論研究会は、治安維持法の下で弾圧され、ついには1938年2月に解散に追い込まれ、11月には一斉検挙(唯物論研究会事件)を受けて多くの犠牲を余儀なくされた歴史がある。こうしたことが、1937年の日中戦争開始、翌年の「国家総動員法」施行という事態の推移と無関係でなかったことは、指摘するまでもない。法案は、「国家安全保障会議」(NSC)法案などと並んで、日本をふたたび戦争に巻き込む危険性の高いものであり、まったく正当性を欠いたものである。
 大多数の国民、マスコミもが反対する悪法案は廃棄する以外にないことを、本協会は重ねて表明するものである。

戻る