インフォーマル・セッション

環境思想部会

「バイオマスエネルギー政策の階級・階層性」市原あかね(金沢大学)

温暖化の激化を回避する課題が全人類的な意義を持つことは否定できない。しかし、解決の道を模索するために一歩踏み込むと、階級間階層間の利害の乖離や対立に気づかざるを得ないだろう。たとえば、温暖化対策としてのEUの風力発電は、都市中間層に支えられた環境運動とEUの競争力増強という経済戦略の接点に位置しているが、デンマークなどの例を除けば地域経済の建て直しや自治を伸ばす働きは期待されていない。本報告では、現段階を、資本主義システムの大危機としての環境問題が、社会的にとらえなおされ解決の道を獲得する「エコロジー的近代化」の過程にあるとし、EU風力普及に代表される「競争的エコロジー的近代化」から地域問題・格差問題を組み込んだ広範な妥協の形成としての様式への転換を図る際の条件を、バイオマスエネルギーを対象に、技術、ヘゲモニーブロックの形成、地域システムなどの面から検討する。

「エコロジズムとジェンダーとの関係性」吉田哲郎(東京農工大学博士課程)

エコロジズムは自然と人間との関係性を問い直そうとする立場である。これを思想として捉えたならば、近代を超克しようとするものであるといえるが、一見ジェンダーとは無関係であるように思われる。しかし、生命や生活を支える再生産活動に関わる女性はより自然に近い存在として捉えられ、自然観の形成にジェンダーの視点はすでに含意されているものと考えられる。とりわけ西洋近代の自然観は性差別の基礎をなす家父長制によって強化されていると見たとき、エコロジズムはフェミニズムと共鳴し、そこに誕生したのがエコ・フェミニズムである。一方で、日常生活からエコロジズムに接近していったパイオニア的女性として「エコロジー」を提唱したエレン・スワローや『沈黙の春』を著したレイチェル・カーソンを挙げることができる。このようにエコロジズム運動を先導する女性の役割もまた大きい。しかしながら、その女性性を本質的なものとみなすか、あるいは構築的なものとみなすかという根本的な問題もはらんでいる。

マルクス部会

報告 渡辺憲正(関東学院大学)

ドイツ・イデオロギー』CD版の編集作業がいよいよ日本人研究者グループの下で始まった。『ドイツ・イデオロギー』についてはさまざまな版本が存在し、つねにテキスト問題がつきまとっていた。今回のCD版は、基底稿と改訂稿と最終稿をそれぞれ別のファイルで示すことによって、手稿そのものの執筆過程を復元しようとするものである。マルクス部会のインフォーマル・セッションでは、じっさいの復元結果を示し、これまでのテキスト問題について議論を深めたいと思う。

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