大会開催校からのあいさつ

昨年は、「政権交代」の掛け声の中で、雪崩のように自民党政権が倒れ、鳩山民主党(連立)政権が誕生しました。「友愛」のレトリックに彩られた鳩山氏の語り口には、確かに旧来の自民党政権には無いものが響いていましたし、ここに新しい時代が開けるとの思いを重ねた国民も少なくなかったように思います。しかし二酸化炭素25%削減の「鳩山ドクトリン」も普天間基地の移設問題も「コンクリートから人へ」の政策転換も、何もかもが半端のまま鳩山政権は慌しく潰えました。しかし民主党政権になったから全てが変わるというような話にならないのはもちろんですが、民主党政権になったからといって何も変わらないさ…と訳知り顔に言うこともまた間違っているように思われます。自殺者が年間3万人を常時越えるというのは、日露戦争レベルの年間戦死者数に近い異常な数値であり、この国の最も傷つきやすい部分から悲鳴を上げているサインでしょう。小泉構造改革のもたらした死屍累々の無惨さをどのように癒してゆくのか…。多くの国民がそのことを真剣に思い、その思いが少なくとも自民党ではない何かに託されたのは間違いないのです。
こうした状況を時事的なレベルで受け止めることは唯物論研究協会の仕事とは言えませんが、そこで提起されている本質的な問題をより大きなスパンとフレームから受け止め、ありうる解決への道を模索することは、まさに私たちの本領と言えましょう。今年の大会は「現代における福祉思想の可能性」をシンポジウムテーマに選びましたが、晩期資本主義社会における少子高齢化という労働・福祉構造関係の激変を踏まえつつ、(動物ならぬ)人間にとってケアの論理とは何かを根底的に問い直すものになるだろうと期待されます。
一橋大学に皆さんをお迎えして研究大会を開催するのは、1980年の第3回大会、1992年の第15回大会に引き続き3回目となりますから、古い会員の中には再来という方も少なくないでしょう。大学は東京都の郊外の国立市(国(・)分寺と立(・)川との間にできた町)にあり、JR国立駅から南にまっすぐ伸びる美しい大学通りの両脇に位置する、こじんまりとはしているがロマネスク様式の建築物が印象的なキャンパスです。ただ、開催が3回目になると言いましても、その後多くのスタッフも交代し、今年はまた一から新たな気持ちで準備にあたらねばなりません。また、国立大学の独法化以降、多額の教室使用料を要求されるというようなせちがらい状況もあって、どう切り抜けるかみんなで頭を絞っているところです。いずれにしても皆さんをお迎えし、シンポジウム、各種分科会、個人研究発表など、充実した知的「饗宴」の時を分かち合いたいものです。国立(くにたち)で皆さんと再開できる日を楽しみにしつつ。
(開催校責任者:古茂田宏)

個人研究発表を応募されたみなさまへ(お知らせ)

●開催日時;10月17日(日)10:00〜12:00
●発表タイプ;
Lタイプ(発表30分/討論30分)
Sタイプ(発表20分/討論10分)

●注意事項;
1、大会プログラム用原稿(レジュメ:1000字程度)を、8月末までに必ずお寄せください。
3、レジュメは全国唯研HPにて公開いたします。そのため、大会の1週間くらい前までに、修正版をお送り下さいますようお願いいたします。
4、大学院生やODの方で大会にて発表される場合には、旅費の半額を目途に補助をすることになっておりますので、該当する方は、発表の申し込みの際に申請して下さい。

●申し込み先;
〒062-8605 札幌市豊平区旭町 北海学園大学経済学部
  水野邦彦研究室内 唯物論研究協会
E-mail yuiken2010(アットマーク)yahoo.co.jp



研 究 大 会

第33回総会・研究大会

2009年10月16日(土)〜17日(日)
一橋大学

会員の皆様からご知人・ご友人への呼びかけに、大会ポスター(Wordファイルpdfファイル)をご活用ください。

第1日 2010年10月16日(土)


●インフォーマル・セッション(9:00〜11:30※時間は部会によって異なります)

ジェンダー部会(9:00〜11:30)
@和田悠「1960年代の保育所づくり運動のなかのジェンダー」
Aこれまでのジェンダー論テキストの検討
責任者:池谷壽夫(日本福祉大)

北欧思想部会 (9:15〜11:15)
@小池直人(9:15〜10:00)
「北欧社会モデルは生き残れるか」
A豊泉周治(10:05〜10:50)
「デンマーク生産学校について」
B交流(10:50〜11:15)
を予定。北欧社会が私たちに提起している学問的、思想的課題をより広い視点からとらえなおしてみたい。
責任者:小池直人(名古屋大)


●総会(13:00〜14:20)
●シンポジウム
「現代における福祉思想の可能性」(14:30〜18:00)第33回大会シンポジウム趣意書

《報告》

  笹沼弘志(静岡大学)
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利――日本国憲法における「福祉」構想」要旨(兼・発表原稿)
北 明美(福井県立大学)
「子ども手当をめぐる反発にみる日本の福祉思想の課題」要旨発表原稿
藤谷 秀(山梨県立大学)
「福祉」と哲学の接点――倫理としての「福祉」要旨

《司会》
池谷壽夫(日本福祉大学)

《記録者》
  日暮雅夫(立命館大学)

●懇親会 (18:00〜20:00)

第2日 2010年10月17日(日)

●個人研究発表

第1会場(Lタイプ)

明石英人(日本女子大学兼担教員・同附属高校教諭)
「マルクスにおける物象化とヘゲモニー」要旨発表原稿
久田健吉(名古屋市立大学「市民学びの会」)
「家族社会論とヘーゲル哲学」要旨発表原稿(1頁)発表原稿(2頁)発表原稿(3頁)←PDFファイル展開後、ファイル上で右クリックしたあと「右回転」を選択・実行してください

第2会場(Lタイプ)

太田和彦(東京農工大学・博士課程)
「環境倫理学における生態学の位置づけの検討――B.Nortonの「収束仮説」批判を中心に――」要旨発表原稿
窪田玲奈(北海道大学・院)
  「縁辺化の進む地域における高校生の将来展望と地元志向――自己の創発に着目して――」要旨発表原稿

第3会場(Sタイプ)

久保田 貢(愛知県立大学)
「子ども・教育の変容と新自由主義的構造改革――平和教育の探究のために――」
中村 美智太郎(一橋大学・院)
「F.シラーの藝術論について」要旨発表原稿
藤本美貴(立命館大学・院)
「R.D.レイン家族研究における、認識方法をめぐる理論的転調――“comprehension”から“intellection”へ――」要旨発表原稿
間庭大祐(立命館大学・院)
「アーレントの「権力/暴力」対称論の再考――W・ベンヤミンの暴力批判論を手引きとして――」要旨発表原稿

テーマ別分科会
第1分科会「マルクス」(13:00〜16:00) 司会:渡辺憲正(関東学院大学)
○佐々木隆治(一橋大院生)
「マルクス物象化論の核心――素材の思想家としてのマルクス――」要旨発表原稿
○牧野 広義(阪南大)
「マルクスの変革の哲学」要旨発表原稿

第2分科会「農の思想と近代社会」(13:00〜16:00) 司会:尾関周二(東京農工大学)
○牛山敬二(北海道大学名誉教授)
「日本の農業と農村――21世紀に向けての課題――」要旨(兼・発表原稿)
○亀山純生(東京農工大学)
「〈農〉的共同態の現代的意義と、近代的共同(体)論の問題性――現代の“人間の危機”克服の視点から――」要旨発表原稿


第3分科会「青年の『自立』とキャリア教育」(13:00〜16:00) 司会:中西新太郎(横浜市立大学)
○植上一希(福岡大学)
「青年の「自立」とキャリア教育の諸論点――調査研究をもとに――」要旨発表原稿
 
○平塚眞樹(法政大学)
「政策の‘個人化’をどう乗り越えるか?――英国とフィンランドの経験に学ぶ――」要旨発表原稿
  

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