2022.03.14
はるか書房、2021年8月、1800円+税
本書は著者のこの数十年にわたる幸福を主題とする社会学研究の集大成であり、デンマークの社会投資型福祉国家と日本の若者支援との現状対比を中心テーマとしながら、「暗い」現代から未来の可能性を探る独自の比較社会論である。内容的には「デンマークという幸福の国」、「日本の若者の幸福とコンサマトリー概念」、「デンマークが目指す架橋社会」、分断される現代日本の青年期」、「未来への投資」の主題が各章で扱われ、幸福、コ ンサマトリー、架橋、社会的投資などのキーワードによって論じられている。いずれも興味深い論点が提示され、全体を詳細に紹介できないのが残念であるが、評者はとくに次の二点に引き付けられた。第一点は、コンサマトリーを日米の社会理論史を踏まえて消極概念から積極概念へと読み替え、またその視点からの日本の若者の現状解明において、貴重な問題提起をしていること、第二には「学習福祉(ラーン・フェア)」といったデンマーク型社会政策の鍵概念が、マルクーゼやハーバーマスらの道具的理性批判とその問題点を踏まえて積極的解策として意義づけられることである。これらの論点は圧巻であり、現代(批判的)社会論の核となる論争的テーマが扱われていることにおいても、理論研究とリアルだが温かみのある現状把握とが深く鮮やかに結合されていることにおいても、著者の面目躍如を見ることができる。本書は現代の社会研究者が時代を見すえてよく生き、長期スパンで研究活動を進めるうえでたいへん有意義な学風すなわち研究スタイルを提供しているといえ、とくに若い研究者にはぜひとも一読をすすめたい好著である。
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(藤原書店、2022 年、各巻税込 3960 円) I「ショーペンハウアー」、II「自己格闘者ニーチェ」、III「マンとハイデガー」という3巻本で、3巻通しで 1121 頁になる大著である。1996年に『〈受難した子供 […]