1. Home
  2. /
  3. 会員著書紹介
  4. /
  5. 小池直人『共同社会型ヒューマニズムへの探求』

会員著書紹介

2021.07.16

小池直人『共同社会型ヒューマニズムへの探求』

一粒書房,2021 年,3300 円(税別)

 名古屋大学の退職を機に,実に40年間におよぶ研究生活をふり返り,著者自身が編んだ論文集,40年間の研究過程の記録である。今ではデンマークの思想,グルントヴィ哲学の研究者として著名だが,著者がヘーゲル『精神現象学』の研究を起点とし,三木清や丸山真男らの日本思想の研究も経て,グルントヴィ哲学へと進んだことを知る人は多くはないであろう。本書からは,そうした著者の哲学思想研究の軌跡が手に取るようにわかる。

 著者の思想史研究,あるいは思想史研究者としての著者の生き方の「導きの糸」となったのが,「思想としてのニューマニズム」であったという。ただし,その場合のヒューマニズムは,抽象的に人間の尊厳を唱える高踏的なものにとどまってはならず,「現実に生きる人間の状況,とくに社会の底辺に生きる人間」に寄り添うヒューマニズムでなければならない,というのが著者の一貫した思いであった。その思いが,長期の研究生活を通じて練り上げられ,本書のタイトルにあるように,デンマーク社会(サムフンズ)を念頭に置いて,「共同社会(サムフンズ)型ヒューマニズム」という言葉に結実したのである。本書に収めれた諸論考は,「現代社会を問う」一連の研究(第1部)であり,ヘーゲルから丸山,三木,そしてグルントヴィへと結ばれた,そうしたヒューマニズムへの思想史的探求(第2部)である。

このエントリーをはてなブックマークに追加