1. Home
  2. /
  3. 会員著書紹介
  4. /
  5. 阿比留久美『子どものための居場所論』

会員著書紹介

2022.07.08

阿比留久美『子どものための居場所論』

(かもがわ出版、2022 年、2000 円+税)

 「居場所」という概念が普及し始めたのは、1980 年代半ばのフリースクール運動からだと言われている。1990 年代以降、文部科学省においても、不登校(登校拒否)の急増を受けて、「居場所」概念が用いられるようになるなど、子ども・若者に関する様々な実践・政策・研究において、「居場所」概念は広がり活用され今に至っている。

 しかし、そうした広がりのなかで(とくに政策化されるなかで)、当事者である子ども・若者にとっての本来の「居場所」の役割がゆがめられているのではないか。また、現代社会の変化のなかで、子ども・若者の「居場所」はさらに失われているのではないか。そうしたなか、「居場所」についてどのように考えればいいのか。

 長年、子ども・若者の「居場所」の様々な現場に通い、社会教育・福祉の観点から研究を行ってきた著者が提起する問いは、これまでの「居場所」に関する運動・実践・政策、そして研究を問いなおすという射程を備えている。そして、この問いに対して展開される議論は、子どもの育ちと、それに対する大人の関わり方・社会のあり方を軸としながら、様々な具体的なトピック(著者自身の経験を含む)に基づいてなされており説得力が高い。

このエントリーをはてなブックマークに追加