2022.07.08
(晃洋書房、2022 年、税込 3300 円)
批判的社会理論ないしフランクフルト学派の専門家が名を連ねた魅力的な論文集。第I部は「ハーバーマス理論の現在とその周辺」、第II部は「ホネット理論の展開」と銘打たれ、11 本の論考が並ぶ。
第 8章「ホネットとアメリカ批判的社会理論」(小山花子)では、『再配分か承認か?』(2003年)をもとに、米国を代表する批判理論家ナンシー・フレイザーとホネットとの間で交わされた論争が仔細に辿られる。アメリカ政治思想の専門家である著者の叙述は、論点ないし問題点が明快に整理され、フレイザーとホネットとのやり取りに読者を巧みに誘うものといえる。両者がともに、ポストモダン的社会理論を批判しつつ、規範性を重視する点も示唆的である。
掉尾を飾る第 11 章「ホネットにおける「社会的自由」と新自由主義批判」(日暮雅夫)は、『再配分か承認か?』以降ホネットが核心的論点とする〈社会的自由〉を、『自由の権利』(2011 年)と『社会主義の理念』(2015 年)とにそくして論及する。前者については、「人間がその個人的自由を他者との相互関係においてのみ実現すること」という〈社会的自由〉概念をふまえ、そこに4点の特徴をみいだしたうえで、ホネットの新自由主義批判に目を向ける。後者については、資本主義批判に重ねて〈社会的自由〉がまさに未来指向的な社会主義の理念として論じられる。
第 11章でいわれるようにホネットは課題を残しているが、そうした指摘は各章にみられる。そして、それらの課題は日本に住む私たちにも突きつけられている。
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