2023.10.03
(桜井書店、2023 年 7 月、税別 4500 円)
昨年の『「ドイツ・イデオロギー」の研究』につづく著者渾身の力作。〈Gemeinde=共同体〉と〈Gemeinwesen=共同社会〉との一筋縄ではゆかない区別をふまえた本源的所有形態論の精緻な再構成が本書で果たされる。商品としての労働力を廃棄し、生産を各個人に属する活動へと転化することによって、個人的所有を恢復することは、「初期から一貫して個人の生活、個体性の確証を問題としていた」マルクスにとって、ひとつの理論的核心をなすことが論じられる。社会のなかで個体性が確証されないことは疎外にほかならない。〈個体性の確証〉は人間的現実の確証であり、現実的疎外を廢棄する共産主義の目的とされる。この〈個体性の確証〉と協同組織形成との結合、および、資本の本体部分をなす物象化と疎外の廢棄ないし縮減は、まぎれもなくマルクスの社会変革構想につながるという。物象
化は人格と人格との関係を物象と物象との関係に転化するのみならず、人間のありかたを変容させる。この変容は、貨幣の次元と資本の次元とにあらわれ、社会の多数者の無所有を肯定し、多数者の人格を否定することになる。このように資本の論理に立脚して人格変容をもたらす「所有の経済学」を批判し、それを「労働の経済学」に転換しようとはかるのがマルクスの経済学批判であり、同時に変革理論であるという。この人格変容やマルクス物象化論を詳論する次作『貨幣・資本と人格変容』の上梓も予告されており、それも必ずや全国唯研会員に裨益するところ大であろう。
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(藤原書店、2022 年、各巻税込 3960 円) I「ショーペンハウアー」、II「自己格闘者ニーチェ」、III「マンとハイデガー」という3巻本で、3巻通しで 1121 頁になる大著である。1996年に『〈受難した子供 […]
(社会評論社、2022 年、2200 円+税) 本書は、長年フォイエルバッハを研究してきた著者が、自らの研究の総括として著した珠玉の一冊である。第I部では、人間という存在にとって欠くことができない営為であるにもかかわら […]