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意見表明

2023.11.18

大学の自治・学問の自由を破壊する国立大学法人法改悪に反対する

政府は、一部の国立大学法人に「運営方針会議」設置を義務づける国立大学法人法改正案を臨時国会に付議した。本「運営方針会議」には、役員会の議決事項であった中期目標・中期計画に関する事項及び予算・決算に関する事項についての議決権限が委譲される。また、このような権限に基づいて大学の運営方針全体を決定し、方針通りに大学が運営されているかどうかを監督し、運営が適切に行われていないと認めるときは、学長に対し改善を求めることができるとされている。さらに、学長がこれに従わない時には、その解任について学長選考・監察会議に対して意見を述べる権限も与えられており、大学の運営全般について、これまでにない強大な権限を持つ組織となっている。

この「運営方針会議」は、学長の他、3名以上の委員で構成されるとされているが、その委員の選考に当たっては、学長選考・監察会議との協議を経て、「文部科学大臣の承認」を得た上で学長が任命するとされており、学長の任命が「国立大学法人の申出に基づく」とされているのに比して、より強い国の関与を認める規定となっている。

これまで役員会、教育研究評議会、運営協議会などの大学構成員を含む会議において大学運営が担われてきたのに対して、これらの既存の会議をはるかに超える権限を持つ会議体が設置され、かつ、その会議体の構成員に国の関与が強まることになれば、大学運営の基本原則である「大学の自治・学問の自由」が大きく損なわれることになるのは明らかである。

「運営方針会議」の設置を義務づける「特定国立大学法人」は、理事の数が7名以上の国立大学法人のうちから政令で定めるとされている。この「特定国立大学法人」には、当面 5つの法人が想定されているとのことであるが、このことは、いわゆる「国際卓越研究大学」に限らず、主要な大規模国立大学すべてで大学運営への国の強い関与が可能となることを示している。また、「特定国立大学法人」以外であっても、法人側からの申し出により、文部科学大臣の承認を得て「運営方針会議」を置き、「準特定国立大学法人」となることができるとされていることから、このような組織運営体制が無制約的に拡大する可能性もあり、一部の国立大学法人のみの問題として看過することはできない。

私たち唯物論研究協会は,その前身である戦前の唯物論研究会が治安維持法による弾圧を受けた苦い歴史から、時の権力が「学問の自由」に介入を始めるとき,その時代と社会がどこに向かっているのかをよく知っている。このような経験から 1978 年の創設以来、私たちは自由と民主主義の発展を願って学術研究を進め、その活動の根幹に「学問の自由」を置いてきた。このような歴史と経験を持つ本協会としは、今回の国立大学法人法改悪による「大学自治・学問の自由」破壊の動きは絶対に認めることのできないものであり、これに強く反対することを、その総会の名を持って決議する。

2023年11月18日 唯物論研究協会第46回総会

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