2016.09.26
(かもがわ出版、2016年2月、1800円+税)
渡辺治氏が安倍政権を論じた著書は本書で5冊目になるという。渡辺氏は、政治家安倍晋三は論じるに値するだけの存在ではない旨、後書きで述べているが、それにもかかわらず、安倍政権は、氏による現代日本政治分析の内で最も多く言及される政権となった。そうなったのは、言うまでもなく、安倍政権が「軍事大国化と新自由主義改革」という「二つの事業」の強行を担う政権となったからである。
本書は、2014年夏から2015年秋に至る、集団的自衛権の容認と戦争法制定に突き進んだ安倍政権の動向と、これに反対する全国的運動の拡大とを視野に収め、軍事大国化という安倍政権の目標がどこまでどのように果たされたか、その限界、制約はどこにあるかが中心的に論じられる。いつもながら、その筆致は明快で鋭い。戦争法案の強行後もなお、明文改憲による目指す安倍政権の姿勢には、集団的自衛権容認が限定的にならざるをえなかった事情があると本書は言う。戦争法反対運動の広がりがそうした制約を課したことはたしかだが、だからこそ安倍政権は明文改憲に執着する。「(安倍首相は)参院選の結果次第では、明文改憲に向けて挑戦することをあきらめていない」という指摘は、2016年秋の政治的焦点を正確に言い当てている。
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