2022.11.12
日程:2022年11月12日(土)~13日(日)
会場:東京都立大学
9:30‐10:30 | 人新世のポストヒューマン論を考える | 穴見愼一(立教大・非常勤) |
10:45‐11:45 | 修理する権利とポストヒューマン | 吉田健彦(東京農工大・非常勤) |
生産学校から予備的礎教育の創設へ | 豊泉周治(大東文化大) |
世界中をコロナ禍が襲って2年以上が経ち、未だに終息が見えない状況が続いている。この災害は、グローバルに展開されてきた新自由主義の動向にも否応なく影響を与えた。国際的な資本移動の障壁をなくし、グローバルな労働市場とサプライチェーンの構築によって、資本蓄積の危機を克服しようとする政策潮流をグローバル新自由主義と呼ぶならば、それは現時点で、方向転換あるいは少なくとも一時停止を余儀なくされているといえるだろう。直接的に、感染症拡大予防のためにヒトやモノの移動が抑えられ、グローバル市場の縮小がもたらされたというだけでなく、ここ数十年の間、世界的に進められてきた公的な社会保障や医療の削減、それと呼応した自己責任論や自助努力のイデオロギーの強化が、パンデミックには通用しないことが突き付けられたためである。各国政府は、緊急避難的に、巨額の財政支出によって、給付金を配り、ワクチンの接種を進めた。社会の維持が、新自由主義の理念より優先されたのである。
もちろんコロナ禍以前から、グローバル新自由主義はさまざまな対抗運動に直面しており、いろいろな変化をもたらしている。気候変動を抑制すべく脱炭素社会を求める運動は世界的な高まりを見せ、その主張は国連で採択された SDGs の中心的な内容として位置づけられている。アメリカでは格差拡大に対するラディカルな改革を主張したサンダースが大きな支持を得て、バイデン民主党政権への交代をもたらした。さらにチリでは明確に新自由主義からの転換を表明した左派のボリッチ政権が誕生している。また、日本においても、政権交代こそないものの、「自助」を前面に出していた菅政権が急速に支持を失った後に、「新しい資本主義」をスローガンに新自由主義色を薄めた岸田政権が誕生するという変化も起こっている。
こうした一連の動きは、対抗的な社会運動が統一的に組織されることなく、グローバル新自由主義に対する抵抗がアドホックな形でしかなされていないことに起因するといえるだろう。社会運動がもはや大きな理想を追求するものとなりえず、人々の生存を維持するためのものへと後退している現在、変えるべき現実の問題は明らかでありながら、効果的な対抗運動が生まれず、社会の分断ばかりが深まっていくような状況は、展望を見出せないディストピアといいうる事態である。このようななかで、グローバル新自由主義に対抗する社会のビジョンを示すことは、困難ではあるが、重要な課題だといえるだろう。
いまグローバル新自由主義の支配・統治構造の揺らぎと見えるものは、そこからの転換につながる動きと考えられるのだろうか。だとしたら、それは何に向かうのだろうか。それとも、一次的な回避や修正にとどまり、既存の路線へと回帰していくものなのだろうか。本シンポジウムでは、グローバル新自由主義の支配・統治構造の現状分析とそれへの対抗運動の現状や可能性について、議論していきたい。
第1報告の柴田努氏には、グローバル新自由主義の下でのコーポレートガバナンスの変化の動向の分析をふまえて、資本がどのように現状の危機を乗り越えようとしているのか、そして対抗軸をどこに見出せるのかについて報告していただく。
第2報告の市原あかね氏には、地域レベルでの対抗運動の現状や可能性について報告していただく。具体的には、気候危機問題を土台にする形で、金沢市企業局ガス・発電事業民営化に反対する市民運動や、世界の民営化・再公営化の地域運動や、自治体エネルギー政策の動向について論じていただく。
第3報告の菊池恵介氏には、フランスの事例を中心に、新自由主義政策の推進が金融危機を招き、対抗運動に直面して生じた政治的状況について報告していただく。既成政党の凋落と左右のポピュリズムの台頭が何をもたらしているのかについて論じていただく。
これらの報告をふまえて、グローバル新自由主義の現状を多角的に理解するとともに、ディストピア的状況を乗り越え、その先に目指すべき社会の姿の構想につながるような議論を喚起したい。
新自由主義とグローバル企業の蓄積戦略―コーポレート・ガバナンスの変容を中心に | 柴田努(岐阜大学) |
エコロジー的近代化の現在:水、エネルギー、食料をめぐる新自由主義的動向と住民主体の自治的動向の攻防 | 市原あかね(金沢大学) |
ヨーロッパ・中道左派の変質と極右の台頭 | 菊池恵介(同志社大学) |
初期グルントヴィの知識制度論――「学芸」と「学校」 | 小池直人(岡崎女子大・非常勤) |
大正期知識人における“批評”という問題―文明批評を中心として | 小糸咲月(一橋大学大学院社会学研究科) |
集めたモノに囲まれて、意識を形作る――ベンヤミンにおける気散じと集中―― | 木戸良則(京都大学大学院人間・環境学研究科) |
アドルノにおける教養と精神の問題――反ユダヤ主義に対する視点から―― | 早野禎二(東海学園大学) |
日本における冷戦へのオルタナティブ模索の経験とその現代的意義 ――六〇年安保闘争前後における清水慎三の平和構想を手掛かりに―― | 梶原渉(一橋大学大学院社会学研究科) |
気候変動対策と「動物の権利」――昆虫食および培養肉の問題を中心に―― | 丸山啓史(京都教育大学) |
「若手研究者」企画
担当:小谷英生(群馬大)
ブルデュー社会学理論から「反新自由主義の教育学・教育運動」を考える | 小澤浩明(東洋大) |
教育運動における新たな連帯の可能性/困難についての試論 | 阿比留久美(早稲田大) |
新自由主義に抗するラディカルなソーシャルワークの展開 | 伊藤文人(日本福祉大) |
貧者の統治の現代的諸相とソーシャルワーク | 桜井啓太(立命館大) |
加速主義の「チャラさ」をどう考えるか―加速主義と歴史の切断面 | 小泉空(大阪大・院) |
〈加速〉と〈共鳴〉――ハルトムート・ローザと実在論 | 小谷英生(群馬大) |
日程:2024年10月26日(土)~27日(日)会場:東洋大学白山キャンパス6号館参加費:2000円(一般会員・終身会員)、500円(院生・退職者割引会員・OD割引会員・非会員)第47回 総会・研究大会 プログラム集(全 […]
シンポジウム「戦争を原理的に否定する論理」/分科会「ケアを問う」「スポーツ振興と都市(再)開発を考えるー京都府立植物園・北山エリアの開発を事例として」「フランクフルト学派の現在」
シンポジウム「コロナ禍における生と労働」/分科会「政策と科学」「地べたの政治学―民主主義をつくる技術(アート)」「現代実在論」