2016.09.26
(ミネルヴァ書房、2016年1月、5,500円+税)
本書は立命館大学産業社会学部の創設50周年を記念した叢書(全5巻)のうちの1巻である。とはいえ、もし読者がそのタイトルや第一印象から、「記念論文集」にありがちな総花的で無難な構成を想像すると、良い意味で裏切られるだろう。全巻構成からしてメディア批判や新自由主義下の労働状況における排除の問題、現代東アジアの社会意識(排外意識や自殺、ジェンダー問題!)など、産業社会学部らしい「エッジの効いた」内容がならぶなかで、本書はちょうど叢書全体の理論部門という位置づけになろうか。その本書も、本会の日暮会員によるナンシー・フレイザーへのインタビューをはじめ、日暮・市井・尾場瀬・百木各会員による魅力的な論考を収録し、現代の批判理論を主題とした大変読み応えのある論集になっている。各会員以外による論考も、カルチュラル・スタディーズやハーバーマスのポスト・セキュラー論など、全国唯研の会員ならば大いに関心をそそられるところであろう。評者個人としては、自分の専門からやや遠いこともあって、「統制と抵抗の場としてのスポーツ」を論じた市井会員の論考や、カルチュラル・スタディーズの観点から「運動としてのフォーク・ソング」を論じた粟谷氏の論考など、一見「ソフトな」主題に関する批判的な分析が印象に残った。入門書的な読みやすさではないが、ぜひ一読をお勧めしたい。
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