2016.09.26
(はるか書房、2015年8月、1,700円+税)
長年にわたる著者の青年研究によって培われた知見に基づき、危機的な状況に瀕している現代日本の社会関係をどのように組み変えることが可能なのかを問うた一冊。他者と関わりを持とうとする営みが、ともすれば暴力的な支配関係に陥り、他方では孤立と分断とを生み出しているという矛盾した状況を、具体例に即しながら丹念に読みといた上で、社会を壊すことなく、安定した関係を作りうるような他者に対する向き合い方を、「ケア」という言葉でつかまえようとしている。そこで言われる「ケア」の意味は、通常使われるよりもずっと広く、人と人とが豊かな生を育むために必要なあらゆる人間関係の根底にあるものとして、ひいては真に民主的な社会を保障するための基盤という含意まで持っており、つまるところ、そうした「ケア」を社会に埋め込んでいくための方法を探るのが本書の最大の目的だと言ってよい。認識はシビアで先行きは決して明るいものではないが、自分にはどうすることもできない他者が存在せざるえないことの必然性を根拠に、社会関係を組み変えるための資源はあちこちに転がっていると示唆する本書は、意外なほど希望に満ちている。
(桜井書店、2023 年 7 月、税別 4500 円) 昨年の『「ドイツ・イデオロギー」の研究』につづく著者渾身の力作。〈Gemeinde=共同体〉と〈Gemeinwesen=共同社会〉との一筋縄ではゆかない区別をふ […]
(農林統計出版、2021 年、税込各 3850円) 上下2巻からなる本書は、5年間にわたって『現代人間学・人間存在論研究』誌に掲載されてきた著者の考察が、その骨格をなす。長大な論述はとうぜん多岐にわたるが、著者は現代社 […]
(藤原書店、2022 年、各巻税込 3960 円) I「ショーペンハウアー」、II「自己格闘者ニーチェ」、III「マンとハイデガー」という3巻本で、3巻通しで 1121 頁になる大著である。1996年に『〈受難した子供 […]