2021.07.16
水曜社、2021 年、2700 円(税別)
「ドイツの理念・運動・政策」という副題が附された本書は、原理的考察からハンブルク見聞記まで多彩な論考を収める論集である。たとえば日本での「社会」「文化」「社会文化」概念の把握と今日的意義とを叙述する論考では、全国唯研会員諸氏の名やハーバマスらが挙げられつつ、理論的整理がなされる。ドイツ文化政策の研究にもとづく論考では、社会文化の思想と具体的な社会文化の姿が呈示される。とりわけ本書に特徴的なのがハンブルク市での具体的事例を紹介しつつその思想を汲みとる3つの論考であるが、具体的事例から浮かびあがるドイツ社会文化の精神には学ぶべきものが多々ある。
もともとドイツ社会文化運動には、1968 年闘争の精神が色濃く刻みこまれており、大学の改革から地域の改革へと運動の場が広がっていったと指摘される。ドイツの成熟した市民社会において、教養市民階層の「市民文化」でなく〈万人のための文化〉〈万人による文化〉が標榜されているとすれば、日本の〝市民社会〟はどのような文化に、どのような精神に、彩られているのだろうか。
レオナルドなどフィレンツェの画家たちが集いルネサンスの揺籃となった工房(アトリエ)の意義を描くコラム「工房の思想」も、共感するところが多い。
(桜井書店、2023 年 7 月、税別 4500 円) 昨年の『「ドイツ・イデオロギー」の研究』につづく著者渾身の力作。〈Gemeinde=共同体〉と〈Gemeinwesen=共同社会〉との一筋縄ではゆかない区別をふ […]
(農林統計出版、2021 年、税込各 3850円) 上下2巻からなる本書は、5年間にわたって『現代人間学・人間存在論研究』誌に掲載されてきた著者の考察が、その骨格をなす。長大な論述はとうぜん多岐にわたるが、著者は現代社 […]
(藤原書店、2022 年、各巻税込 3960 円) I「ショーペンハウアー」、II「自己格闘者ニーチェ」、III「マンとハイデガー」という3巻本で、3巻通しで 1121 頁になる大著である。1996年に『〈受難した子供 […]