2022.03.14
大月書店,2021年,2000 円+税
原著は 2020年にドイツで刊行され大きな反響を呼び 、 同年のノンフィクション3位の売上を記録したという。この間の日本の斎藤幸平『人新世の「資本論」』のような注目のされ方だと思う。本書の帯には 、 「ポスト資本主義の未来を刮目せよ」と 、 斎藤氏の推薦の言葉がある。主張は明快であり 、 わかりやすい。その全体を一言で要約するとすれば 、 「脱成長」と括るよりも 、 「〈ホモ・エコノミクス〉からの決別」とした方がよいだろう。「自己の利益」の「合理的」追求から 、地球規模での「公正」の追求へ。斎藤氏の議論の鍵は〈コモン〉だが 、 本書のそれは〈公正〉である。そして 、 〈公正〉を担保するのは実際のところ〈ホモ・エコノミ クス〉ではない〈私たち〉のと行動であり 、 それに基づいた国家と政治のあり方である。
格別に新しい主張があるわけではないが 、 50年も前に指摘された『成長の限界』を放置してきたこの間の新自由主義の招いた〈新たな現実〉に対して、 絶望することなく冷静にこれを直視して、 持続可能な未来をともに拓こうとする明快なメッセージが伝わる。いま、 ドイツ以上に日本で広く読まれるべき一冊である。時宜にかなった本書の迅速な翻訳出版をすすめた三崎氏ほか唯研会員、 訳者のみなさんに、 敬意を表したい。
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