2023.07.23
(藤原書店、2022 年、各巻税込 3960 円)
I「ショーペンハウアー」、II「自己格闘者ニーチェ」、III「マンとハイデガー」という3巻本で、3巻通しで 1121 頁になる大著である。1996年に『〈受難した子供〉の眼差しとサルトル』を上梓していた著者は、ニーチェにたいするサルトルの格闘が思想家サルトル形成上の大いなる磁場であったとみなし、その磁場に引き寄せられるかのように著者も長い年月にわたり思想的格闘をつづけてきた。第I巻ではショーペンハウアー・ヴェーバー・鈴木大拙・西田幾多郎らの論考がとりあげられ、第II巻では、ニーチェにいっそう即した考察がくりひろげられる。かつて実存主義協会の大きな原動力をなしていた信太
正三がいちはやく〈子供〉に著目していたことに著者は感歎し、そのニーチェ研究に一定の評価を加えるが、なぜかニーチェの〈受苦〉には信太の目がほとんど向けられていないことをはじめ、大きな缺落をみとめざるを得ないという。第III巻で著者はトーマス=マンやハイデガーらを俎上にのぼすが、巷間みられるニーチェとハイデガーとを重ね合わせることを始めから前提する傾向を尻目に、ニーチェの叙述とハイデガーの叙述とを重ね合わせて解読してゆく。〈共苦の倫理〉と訣別した後期ニーチェは、反「共苦主義」であるがゆえに反「社会主義」の立場をとったと考えられるのであり、ナチズムとの関係にそくしても「〈黒か白か〉式の単純な二分法」で思想を論ずる態度は著者のいうとおり禁遏されるべきであろう。後続の著作家に奥深く影響したニーチェの強力な磁場のほぼ全貌が、この3巻本で描き出される。「独学の人」「徹底的なアマチュア」を自任する著者の、それゆえの既存の枠組にとらわれず真摯に哲学に打ちこむ著者の、面目躍如たる著作である。
(桜井書店、2023 年 7 月、税別 4500 円) 昨年の『「ドイツ・イデオロギー」の研究』につづく著者渾身の力作。〈Gemeinde=共同体〉と〈Gemeinwesen=共同社会〉との一筋縄ではゆかない区別をふ […]
(農林統計出版、2021 年、税込各 3850円) 上下2巻からなる本書は、5年間にわたって『現代人間学・人間存在論研究』誌に掲載されてきた著者の考察が、その骨格をなす。長大な論述はとうぜん多岐にわたるが、著者は現代社 […]
(社会評論社、2022 年、2200 円+税) 本書は、長年フォイエルバッハを研究してきた著者が、自らの研究の総括として著した珠玉の一冊である。第I部では、人間という存在にとって欠くことができない営為であるにもかかわら […]