2009.11.30
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫 殿
文部科学大臣 川端 達夫 殿
2009年11月30日 唯物論研究協会委員会 委員長 渡辺憲正(関東学院大学教授)
現在、行政刷新会議がおこなっている事業仕分けにおいて、学術関連予算の縮減や執行停止の評価が相次いで下されています。なかでも我々は、第3WGにおいて三つの「競争的資金(若手研究育成)」に対し予算縮減の評価コメントが出されたことに強い憤りを感じ、抗議の意思を表明します。
欧米の多くの国々に比べて大学院授業料が高額である我が国では、若手研究者支援策はむしろ不十分であったと言わざるを得ません。上記の競争的資金のうち「特別研究員(PD)」を例にとると、2009年の採用者は322人にすぎず、採択率は1割にも満たない現状です。評価コメントにある「ポスドクの生活保護のようなシステム」、「雇用対策のようなもの」といった発言は明らかな事実誤認であり、むしろ若手研究育成資金が過度に「競争的」にしか配分されていない現状を改めなければなりません。我々は、若手研究者育成の予算を増額するとともに、あわせて授業料免除や奨学金の措置を拡充することを強く要望します。
この間、国立大学法人運営費交付金や私大助成金の減額がつづき、任期のつかない研究者のポストは減少していますが、これは、我が国の研究と教育の将来にとってきわめて憂慮すべき事態です。学術研究の発展は、多くの研究者の継続的な努力があって初めて成り立つものであり、基礎研究か応用研究かを問わず、自然・人文・社会科学のいずれの分野も十分に研究環境が整備されなければなりません。とくに本学会の多くの会員が従事する人文・社会科学の研究は、数世代にわたる地道な研究の積み重ねがなければ、その発展が見込めない領域です。また教育という観点からみても、人文・社会科学分野における高等教育を担いうる有為な人材を継続的に育成することは、文化的に成熟した国家が果たすべき重要な責務と言えるでしょう。
こうした中での研究者ポストの減少および研究支援策の縮減は、学術研究の発展を担うべき有為な人材が離散してしまうという意味で、多大なる国家的損失を招くものであります。2002年に民主党が発表した声明「科学技術のフロントランナーを目指して」には、科研費など競争的資金について、「特に若手研究者に対する資金配分が十分に行われてこなかった」という評価が記されています。政府がこの精神に立ち戻り、若手研究者育成政策をむしろ拡充してゆくことを、強く要望します。
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